出産や手術、子どもの通院などで年間の医療費が膨らんだ年は、医療費控除を使うかどうかを検討します。同時にふるさと納税も続けている場合、組み合わせ方を間違えると控除を受けそびれることがあります。
結論を先にお伝えすると、医療費控除を使う年は、ふるさと納税もまとめて確定申告で処理する方針が手戻りなく済みます。ワンストップ特例で済ませようとすると、医療費控除側の手続きとぶつかり手間が増えます。
本記事では、医療費控除の基本ルール、ふるさと納税の限度額への影響、家族分の合算、対象になる費目とならない費目、領収書管理のコツまでを解説します。
結論:医療費控除を使う年は確定申告でまとめて申告
医療費控除そのものはふるさと納税と「ぶつかる」制度ではなく、両者は併用できます。ただし手続きの流れが変わるため、早めに段取りを把握しておくと年末から確定申告の時期がスムーズです。
医療費控除の基本ルール
医療費控除は、1 年間(1月〜12月)に支払った医療費が一定額を超えた場合、所得から差し引ける制度です。計算式は次のとおりです。
家族分の合算ルール
医療費控除は、同じ家計で生活している家族(生計を一にする家族)の医療費をまとめて申告できます。共働き夫婦の場合、所得が多い人にまとめて申告したほうが、適用される所得税率が高い分だけ節税効果が大きくなります。
保険金で補填される金額の控除
医療費から、入院給付金や高額療養費、出産育児一時金などで戻ってきた金額を差し引いた残りが対象になります。「補填する目的の保険金」だけが対象で、傷病手当金など所得補償型は控除対象外です。
ふるさと納税の限度額への影響
医療費控除は所得控除なので、課税所得を下げます。そのため、ふるさと納税の限度額も連動して下がります。ただしその下がり幅は限定的で、多くの方は数千円〜1 万円程度です。
確定申告の流れ
医療費控除とふるさと納税の寄付金控除は、同じ確定申告書 B で申告できます。
- 医療費控除の明細書を作成:1 年分の医療費を「治療を受けた人」「医療機関名」「金額」「保険金等で補填される金額」の項目別にまとめます。e-Tax の場合は「医療費通知データ」を取り込めば自動入力されます。
- 確定申告書 B を作成:第一表「医療費控除」欄に控除額を、「寄付金控除」欄にふるさと納税の合計額を入力。第二表に寄付先の自治体名と寄付額を記載します。
- e-Tax または郵送で提出:寄付金受領証明書は電子データ(XML)で添付するか、紙で同封します。医療費の領収書は提出不要ですが、5 年間の保管が必要です。
対象になるもの・ならないもの
| 区分 | 対象になるもの | 対象にならないもの |
|---|---|---|
| 診療・治療 | 診察料、手術費、入院費、歯科治療費(保険適用外でも対象) | 美容目的の施術、矯正歯科の一部 |
| 医薬品 | 処方薬、医師の指示で購入した市販薬、ドラッグストアの治療薬 | サプリメント、ビタミン剤、健康食品 |
| 通院交通費 | 電車・バス代、タクシー代(公共交通機関の利用が困難な場合) | 自家用車のガソリン代、駐車場代 |
| 出産・育児 | 分娩費、入院費、定期検診費、不妊治療費 | 無痛分娩の希望料金以外、里帰り出産の交通費 |
| 予防・検査 | 検査の結果、治療が必要となった場合の検診費 | 健康診断、人間ドック(病気が見つからない場合)、予防接種 |
判断に迷う費目は、領収書をすべて取っておき、確定申告時に税務署や税理士に相談してから判断してください。
セルフメディケーション税制との選択
医療費控除の代わりに、特定の市販薬を購入した方は「セルフメディケーション税制」を選択できます。両者の併用はできず、どちらか一方を選びます。
| 項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象 | すべての医療費 | 特定の OTC 医薬品のみ |
| 下限 | 10 万円超(または所得 5%) | 1.2 万円超 |
| 上限 | 200 万円 | 8.8 万円 |
| 条件 | なし | 本人が健康診断や予防接種を受けている |
医療費が 10 万円を超えるなら通常の医療費控除のほうが有利です。逆に、医療費が 10 万円以下でも対象 OTC 医薬品(風邪薬や頭痛薬など)の購入が 1.2 万円を超えるなら、セルフメディケーション税制の検討余地があります。
年収別シミュレーション
以下は、独身・扶養なし・40 歳未満の給与所得者で、年間医療費 30 万円(保険金等の補填なし、控除額 20 万円)を申告した場合の概算です。
| 年収 | 限度額(控除なし) | 限度額(医療費控除あり) | 差 |
|---|---|---|---|
| 500 万円 | ¥61,000 | ¥58,000 | −¥3,000 |
| 700 万円 | ¥108,000 | ¥103,000 | −¥5,000 |
| 1,000 万円 | ¥176,000 | ¥170,000 | −¥6,000 |
限度額の減少は数千円ですが、医療費控除自体による節税額(年収 700 万円なら所得税・住民税で約 6 万円)のほうがはるかに大きく、医療費控除を使う判断は多くの場合で得になります。正確な数値は、当サイトの併用シミュレーターで「医療費控除額」を入力して確認してください。
領収書・明細書の管理ポイント
2017 年から医療費控除の明細書方式が導入され、領収書の添付は不要になりました。ただし、税務署から確認を求められたときに提示できるよう、5 年間の保管が義務づけられています。
- 家族別・月別にファイリング:1 年間で数十枚〜数百枚にもなるので、家族別の透明ファイルに月別で入れるのが管理しやすい方法
- マイナポータル連携で自動取得:マイナンバーカードがあれば、健康保険組合からの医療費通知データを e-Tax に直接取り込める
- 交通費はメモで記録:通院交通費は領収書がないため、家計簿アプリやメモ帳に「日付・行き先・金額」を記録しておく
- 市販薬のレシート:レジで医療品とそれ以外をまとめて買うと、明細を分ける手間が増える。可能なら別会計にする
よくある質問
Q.出産した年は、ふるさと納税はどうしたらいいですか?+
Q.医療費控除と寄付金控除のどちらを先に書けばいいですか?+
Q.夫婦のうち、医療費控除は誰の名前で申告するのが得ですか?+
Q.医療費が 10 万円ちょっと超えただけでも申告したほうがいいですか?+
Q.保険金で全額補填された医療費は、控除対象になりますか?+
Q.確定申告期限を過ぎたら、医療費控除は受けられませんか?+
まとめ:この記事のポイント
医療費控除を含めた限度額は、当サイトの併用シミュレーターで確認できます。年収・家族構成・iDeCo・住宅ローン控除と合わせて医療費控除額を入れれば、ご自身の正確な限度額が表示されます。
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- ・ 国税庁 医療費を支払ったとき(医療費控除)
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