結論:年末調整で精算される税金の正体
会社員の所得税は、毎月の給与から「概算」で天引きされています。年末調整は、その概算と1年分の正しい税額との差を精算する手続きです。生命保険料控除や iDeCo の掛金、配偶者控除など、毎月の天引きでは反映されていない控除を申告すると、多くの方は12月または1月の給与で還付金を受け取ります。
本記事では、勤務先から10〜11月に配られる3枚の申告書と、保険会社や金融機関から届く5種類の控除証明書を整理し、記入欄ごとの書き方を解説します。なお記載の制度・数字は2026年度時点のもので、自治体や勤務先の運用によって細部が異なる場合があります。最終的な判断は勤務先の経理または税務署・税理士へご確認ください。
必要な書類は3〜4種類:それぞれ何を申告するか
年末調整で勤務先に提出する申告書は、基本3枚、住宅ローン控除2年目以降を含めると4枚です。1枚ごとに役割が決まっており、間違った欄に書いても精算されません。最初に全体像を押さえておきましょう。
| 申告書(通称) | 正式名称 | 主に申告する内容 |
|---|---|---|
| 基・配・所 | 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 本人の所得見積、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除 |
| 保険料控除申告書 | 給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料・地震保険料・社会保険料・iDeCo |
| 扶養控除等申告書 | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 翌年の扶養親族・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除(来年分) |
| 住宅ローン控除申告書 | 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 | 2年目以降の住宅ローン控除(税務署から本人宛に送付) |
10〜11月までに揃える控除証明書5種類
申告書だけでなく、控除の根拠となる証明書を添付しないと税務署に認めてもらえません。10月から11月にかけて、保険会社や金融機関、自治体からハガキや封書で順次届きます。届いたらクリップで一束にまとめておくと提出時に慌てません。
| 証明書 | 発行元 | 届く時期 | 対応する控除 |
|---|---|---|---|
| 生命保険料控除証明書 | 各生命保険会社 | 10〜11月 | 生命保険料控除(一般・介護医療・個人年金の3区分) |
| 地震保険料控除証明書 | 各損害保険会社 | 10〜11月 | 地震保険料控除 |
| 小規模企業共済等掛金払込証明書 | 国民年金基金連合会 | 10月下旬 | 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo) |
| 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 | 日本年金機構 | 11月上旬 | 社会保険料控除(国民年金) |
| 国民健康保険料の納付済額通知 | 住所地の市区町村 | 翌1月(自治体差あり) | 社会保険料控除(国民健康保険) |
国民健康保険料は証明書が間に合わないことが多く、年内に支払った金額の領収書合計や自治体ホームページの「納付済額の確認」サービスで代用できます。証明書の添付は法令上義務ではないものの、勤務先によっては求められるため、不安なら経理に確認してください。
「基・配・所」の書き方
正式名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」、現場では「基・配・所」と呼ばれる横長の1枚です。本人の基礎控除と、配偶者がいる方の配偶者控除を申告します。
① 基礎控除申告書(左ブロック)
本人の今年(令和8年)の所得見積額を記入します。会社員の場合、年初から年末調整時点までの給与と賞与の合計、12月の給与・賞与の見込みを足した「給与収入の見込額」を記入し、所定の表に当てはめて「給与所得の見積額」を計算します。
| 給与収入の見込額 | 給与所得の見積額(概算) | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 500万円 | 356万円 | 48万円 |
| 800万円 | 610万円 | 48万円 |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 2,205万円 | 32万円 |
| 2,500万円超 | 2,305万円 | 0円 |
所得見積が2,400万円以下なら基礎控除は満額48万円。2,400万円超から段階的に減額され、2,500万円超でゼロになります。多くの会社員は満額48万円の枠で記入します。
② 配偶者控除等申告書(中央ブロック)
配偶者がいる方は、配偶者の氏名・生年月日・マイナンバー・所得見積を記入します。配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入103万円以下)なら配偶者控除、48万円超133万円以下(給与収入103万円超〜約201万円以下)なら配偶者特別控除の対象です。
| 配偶者の給与収入 | 配偶者の合計所得 | 本人所得900万以下のとき |
|---|---|---|
| 〜103万円 | 〜48万円 | 配偶者控除 38万円(70歳以上は48万円) |
| 103万円超〜150万円 | 48万円超〜95万円 | 配偶者特別控除 38万円 |
| 150万円超〜201万円 | 95万円超〜133万円 | 配偶者特別控除 36万〜3万円(段階減額) |
| 201万円超 | 133万円超 | 控除なし |
本人の合計所得が900万円超〜1,000万円以下では控除額が段階的に減り、1,000万円超ではゼロになります。配偶者の年収を本人が記入する欄なので、共働きの方は配偶者本人に確認してから書きましょう。
③ 所得金額調整控除申告書(右ブロック)
給与収入850万円超で、かつ23歳未満の扶養親族がいる、または本人・同一生計配偶者・扶養親族のいずれかが特別障害者である方が対象です。該当する場合のみ、対象者の氏名と要件区分にチェックを入れます。該当しない方は空欄で構いません。
「保険料控除申告書」の書き方
年末調整の還付額にもっとも影響する1枚です。生命保険・地震保険・国民年金・iDeCo を払っている方は、控除証明書を見ながら数字を写していきます。
① 生命保険料控除(3区分・上限あり)
生命保険料控除は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3区分に分かれ、それぞれ新契約(2012年1月以降)と旧契約(2011年12月以前)でも上限が違います。
| 区分 | 新契約 上限 | 旧契約 上限 |
|---|---|---|
| 一般生命保険料 | 4万円 | 5万円 |
| 介護医療保険料 | 4万円 | 区分なし(新契約のみ) |
| 個人年金保険料 | 4万円 | 5万円 |
| 3区分合計 | 12万円 | 10万円(一般+年金) |
控除証明書の右上に「新制度」「旧制度」と必ず明記されています。新と旧が混在する区分では、両方を記入したうえで有利な方を選ぶ計算式が用意されています。区分の取り違えはもっとも多いミスなので、証明書のラベルを声に出して確認しながら書くのが確実です。
② 地震保険料控除(上限5万円)
地震保険料は最大5万円が控除されます。火災保険そのものは対象外で、地震保険部分だけが対象です。火災保険の証券に「地震保険料」として年額が分けて記載されているはずなので、その金額を写します。経過措置として、2006年12月以前に契約した長期損害保険料も最大1.5万円まで控除可能です。
③ 社会保険料控除(国民年金・国民健康保険)
フリーランス時代に払った国民年金や、家族の国民健康保険料を本人が払った場合は、ここに記入します。給与から天引きされている健康保険・厚生年金は勤務先が把握しているため記入不要です。国民年金は「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要です。
④ 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo はここ)
申告書の右下、わずか3行ほどの欄に iDeCo の年間掛金合計を記入します。「個人型年金加入者掛金」と書いてある行が iDeCo の枠です。月2万円なら年24万円、月2.3万円なら年27.6万円。国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付します。
「扶養控除等申告書」の書き方(来年用)
この1枚だけは「来年(令和9年分)」の扶養家族を申告する書類です。来年1月から12月の給与天引きを正しく計算するために、今のうちに勤務先に届け出ます。
主な記入欄
- ・ 源泉控除対象配偶者:本人所得900万円以下かつ配偶者所得95万円以下のとき記入
- ・ 控除対象扶養親族(16歳以上):高校生以上の子・親など
- ・ 16歳未満の扶養親族:所得税の控除はないが住民税の非課税判定に必要
- ・ 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生:該当する場合のみ
続柄欄は「夫・妻・子・父・母」など正確に記入します。マイナンバー(個人番号)の記入欄もあり、家族全員分が必要です。なお勤務先によっては既にマイナンバーを管理しているため、記入不要とされる場合もあります。
住宅ローン控除の年末調整での扱い(2年目以降)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、入居初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は次の2点を勤務先に提出すれば、年末調整で精算できます。
- ・ 税務署から本人宛に届く「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」(残り年数分が一括送付)
- ・ 借入先の金融機関が10〜11月に発行する「住宅ローンの年末残高等証明書」
住宅ローン控除は税額控除(所得税から直接差し引く)なので、生命保険料控除より節税インパクトが大きく、所得税で引ききれない分は翌年の住民税から最大97,500円まで自動的に減額されます。住民税側の手続きは不要です。
よくある記入ミス
勤務先の経理担当が指摘する「再提出になりやすいミス」を整理します。出す前に1つずつ自己点検してください。
| ミスの内容 | 結果 | 防ぐコツ |
|---|---|---|
| 新契約と旧契約の混同 | 控除額が誤計算され還付不足 | 証明書の「新」「旧」表記を確認してから記入 |
| 配偶者の所得欄に「収入額」を記入 | 配偶者特別控除の判定が狂う | 「給与収入−給与所得控除=所得」の順で計算 |
| 扶養親族の続柄を「長男」と書く | 差し戻し | 年末調整書類は「子」「父」「母」など短い続柄で書く |
| マイナンバー記載漏れ | 扶養家族分も含めて差し戻し | 家族のマイナンバー通知カードを事前に揃える |
| 生命保険料控除証明書を添付し忘れ | 控除自体が認められない | 申告書と証明書をクリップで一束にする |
書類を提出した後にミスに気づいた場合も、年末調整の確定(多くは1月末)まで間に合えば修正できます。気づいた時点で勤務先の経理に相談してみてください。
年末調整で間に合わなかった控除を確定申告で取り戻す方法
「証明書が間に合わなかった」「中途入社で前職分が反映されなかった」「医療費控除を入れたい」——いずれも翌年の確定申告(還付申告)で取り戻せます。納税者にとって還付申告は2月16日を待たず、1月から提出できます。
| 年末調整で漏れた項目 | 確定申告での扱い |
|---|---|
| iDeCo・生命保険料控除の証明書遅延 | 還付申告で追加提出。源泉徴収票と証明書を添付 |
| 医療費控除(年間10万円超) | そもそも年末調整不可。確定申告で必ず申請 |
| 1年目の住宅ローン控除 | 初年度のみ確定申告で。2年目から年末調整化 |
| ふるさと納税 | ワンストップ特例または確定申告 |
| 副業所得(20万円超) | 確定申告必須。雑所得または事業所得として |
還付申告は5年間遡って請求できます。過去3〜4年分の医療費領収書を見直すと、思わぬ還付につながる方も少なくありません。手続きは医療費控除との併用ガイドも参考になります。
ふるさと納税が年末調整の対象外である理由
「ふるさと納税の受領証明書を年末調整に出していい?」とよく聞かれますが、答えはノーです。年末調整で扱える寄附金控除は「特定の政治献金」など極めて限定的で、ふるさと納税のような自治体への寄付は対象外と所得税法で定められています。
理由は手続きの設計にあります。ふるさと納税は寄付先の自治体から住所地の自治体へ寄付情報が連携される必要があり、勤務先を経由する年末調整では追えないためです。代わりに用意されたのが2つのルート:
- ・ ワンストップ特例:5自治体以内、確定申告不要、申請書を1月10日までに自治体送付
- ・ 確定申告:6自治体以上、医療費控除や住宅ローン控除1年目と併用する場合
どちらの方法を選ぶかは、5自治体ルールと医療費控除の有無で決まります。ワンストップ特例の条件、および iDeCo を併用する方はふるさと納税×iDeCo 併用ガイドで限度額を確認してから寄付額を決めるのがおすすめです。
年末調整で漏れた控除をリカバリーする
年末調整で間に合わなかった医療費控除・ふるさと納税・副業所得は、確定申告で取り戻せます。
テレビCMでおなじみ。返礼品の発送が早く、ワンストップ特例の電子申請にも対応。
個人事業主・フリーランスに人気。青色65万円控除の電子申告に標準対応。
全国6,800名以上の税理士から無料で紹介。複数比較できる。
※ 上記は広告(アフィリエイトリンク)です。リンク先で発生する申込・契約等は読者ご自身の判断と責任で行ってください。掲載順は紹介料の多寡ではなく編集判断によります。
よくある質問
Q.控除証明書をなくしてしまいました。再発行は間に合いますか?+
Q.iDeCo の掛金は基礎控除申告書ではなく保険料控除申告書に書くのですか?+
Q.配偶者の見込み年収が150万円を超えそうです。配偶者特別控除は使えますか?+
Q.ふるさと納税の寄附金受領証明書はどこに添付すればいいですか?+
Q.住宅ローン控除を初めて受けます。年末調整で申告できますか?+
Q.年末調整が終わったあとに控除証明書が出てきました。やり直せますか?+
まとめ:この記事のポイント
年末調整は1年で唯一、勤務先を通じて節税を反映できる機会です。証明書が揃わなくても焦る必要はなく、漏れた分は確定申告で取り戻せます。来年の節税計画は、当サイトの併用シミュレーターで iDeCo・ふるさと納税・住宅ローン控除を組み合わせた手取りを試算してみてください。